ヴィーガン・ベジタリアンが環境問題に与える影響とは?SDGsの観点で分析

近年、さまざまな分野で注目されている「ヴィーガン」や「ベジタリアン」。この数年で認知度が上がってきていますが、実際のところどんなものなのか、まだよく分からないという方が多いのではないでしょうか。
動物性のものを使わない食事やライフスタイルのことを指しますが、なんとなく美容に良さそう、ヘルシーで健康的という印象のある方もいれば、極端なイメージがあって身近には感じられない方もいるかもしれません。

しかし実は、ヴィーガンやベジタリアンについてよく知っていくと、健康や美容にいいことはもちろん、環境問題にも貢献できる可能性があり、サスティナブルな社会の実現に向けて、良い影響を与え得る考え方なんです。

SDGs、つまり持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)で設定された期限である2030年まであと少し。
今回は、SDGsで採択された17の目標の観点を通じて、ヴィーガン・ベジタリアンについて解説します。

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そもそも「ヴィーガン」「ベジタリアン」とは?

ヴィーガンやベジタリアンの歴史を紐解くと、1944年にイギリスで動物の体・卵・そして新たに乳も食さない協会の会報創刊号で”vegan”という言葉が提案されたことにはじまります。

一般的には食生活をイメージされる方が多いと思いますが、実際にはすべての動物の命を尊重し、犠牲を強いることなく生きるライフスタイルのこと。

食事において動物性のものを食べないことはもちろん、生活の中で動物性のもの・動物を犠牲にして作られているものを使わないというライフスタイルを指します。そのため、日用品でも動物実験を行なわずに作られているものを使ったり、動物の毛皮や羽毛を使ったものを避ける場合もあります。

ヴィーガンやベジタリアンになる背景は、アレルギーや病気など健康のため、美容のため、動物愛護のため、地球環境のため、宗教上の理由など様々です。
そのため、何を食べて何を食べないか、何を避けるかなどは、それぞれの理由や背景によって異なります。ひとくちにヴィーガンやベジタリアンといっても、かなり多様な形式があります。

また、近年においては、健康志向、動物愛護、環境問題への関心の高まりなどから、世界中でヴィーガンやベジタリアンに関する意識や需要は高まっており、ヴィーガン・ベジタリアンであることを公表している著名人も多くいます。経済面でも、世界のプラントベース食品の市場や、ヴィーガンファッションの市場も年々拡大しており、注目度が伺えます。

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ヴィーガン・ベジタリアンは食糧問題の解決につながる

そんな中で、まずヴィーガン・ベジタリアンのライフスタイルが貢献できる可能性が高い分野が、食糧問題です。人口が増え続ける地球において、それだけの人の食事をまかなうのは喫緊の課題です。
SDGsの目標のうち、目標2.「飢餓をゼロに」に該当します。

1. このままだと世界中の食糧が足りなくなる可能性がある

世界の人口は増え続けています。国連の調査によると、2022年現在は約80億人ですが、2050年には97億人になると予測されています。*1 その人口をまかなうためには、2013年時点に比べて倍の食糧を生産する必要があると言われています。*2
しかし、土地や水には限りがあり、地球温暖化の影響で天候不順や異常気象なども起きており、必要な生産量をまかなえない可能性もあります。そのため、必要な食糧の確保は大きな課題となっています。

一方で、穀物の生産量は年々増えており、全世界で年間約27億トンの穀物が生産されています。*3 これは、全世界の人口80億人に対して、1人あたり年間337kgが食べられる量で、平等に分配されていれば飢えることのない量です。
しかし実際には、穀物が生産されていても、先進国で多くのフードロスが発生し、発展途上国を中心に、最大8億2800万人の人が飢餓に直面しています。*4
生産はしていても、加工技術や流通網がなかったり、国際価格の不安定化の影響を受けたりと、偏りが発生してしまっているのが実情です。

こうした食糧問題に、ヴィーガンやベジタリアンが寄与できる可能性は大いにあります。

2. 穀物の消費量は肉食1人分=菜食10人分

実は、穀物が十分に生産されているにもかかわらず、飢餓に悩む人がいる理由のひとつに、畜産業に使われる穀物の課題があります。

牛肉1kgを生産するために必要な穀物は約11kgと言われています。*5
つまり、1人が肉を食べるために使われる穀物で、10人以上が同じ量の穀物でお腹を満たすことができます。これが、多くの穀物が世界で生産されていても、飢餓に悩む人たちが食べるための食糧が足りていない理由の1つです。
そして、その食肉を生産するための穀物の栽培に多くの土地や水が使われており、土地を
追われる人や、綺麗な飲料水を得られないことも課題となっています。

こうした課題に対して、ヴィーガン・ベジタリアンの価値観が広まることで、より多くの人が飢餓に悩まずに済む可能性があります。

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ヴィーガン・ベジタリアンの考えが広まれば生態系や水・土地を守れる

次にヴィーガン・ベジタリアンが貢献できる可能性のある分野は、海や陸をはじめとする環境の保全です。SDGsの目標においては、下記が該当します。
目標14.15.「海や陸の豊かさを守ろう」
目標13. 気候変動に具体的な対策を
目標6 「安全な水とトイレを世界中に」

1. 動物を守ることは生態系を守ること

ヴィーガンやベジタリアンは動物性のものを使わないライフスタイル。そのため、地球上の生き物はなるべく殺さず、尊重し、犠牲を強いることのないライフスタイルを大事にしています。

現在多くの生き物が絶滅の危機にあったり、乱獲により数が減ったりしています。これまで居た生き物が減ると、生態系が大きく崩れ、これまでにない生き物の大量発生や、種の絶滅、それによる海や土地の被害が発生します。

そうした影響で絶滅していく種がいると、連鎖的に他の種が絶滅する可能性もあり、これまで食べていたものが食べられなくなったり、医薬品に使われている植物がなくなってしまったり、私たち人間の生活にも大きく影響します。

そのため、動物や魚を食べないヴィーガン・ベジタリアンのライフスタイルが注目されているのです。

2. 動物を守ることは彼らが住む森を守ること

また、森林破壊も大きな問題となっています。畜産業には家畜が暮らすための広大な土地が必要で、そのために多くの森林が伐採されています。

森林が減ると、生態系に影響があることはもちろん、CO2をはじめとした温室効果ガスの排出へも影響します。本来、森林はCO2を吸収し酸素を排出してくれますが、伐採されCO2が吸収されないうえ、伐採後の木が燃やされたり木炭にされたりする際に、温室効果ガスを発生させてしまっているのが現状です。そうした影響で、さらに地球温暖化が進んでいます。

また、森林が減ることで、土砂災害、川や海の水質汚染、その影響で起きる感染症の拡大などが問題視されています。

そのため、ヴィーガン・ベジタリアンのライフスタイルを取り入れ、動物を守り、森を守ることでさまざまな効果が期待できます。

3. 生産に必要な水の量は牛肉1kg=トウモロコシ20トン

また、もう1つ大きな環境問題となっているのが、水の問題です。
実は、牛肉を生産するにはトウモロコシ生産の約20,000倍の水が必要と言われています。つまり、牛肉を1kg生産するために、トウモロコシを20トン生産するのと同じだけの水が使われます。
多くの人が綺麗な飲料水を得られていない一方で、それだけ畜産業に水が消費されている現実があります。

畜産においては、飼料となる穀物を生産するための水はもちろん、家畜たちや飼育場の洗浄、消毒に使われる水を消費することはもちろん、排水による水質汚染も問題となっています。
家畜たちのふんや尿などが含まれる水がそのまま排出され、細菌が繁殖し水を汚染してしまうことが発生してしまうのです。

こうした排水を減らすことで、人が使う飲料水確保や、水質汚染の防止ができると考えられており、肉を食べないヴィーガン・ベジタリアンが注目されています。

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それだけじゃない!ヴィーガン・ベジタリアンで快適に働ける世の中を

ヴィーガンやベジタリアンは「すべての動物の命を尊厳し、犠牲を強いることのないライフスタイル」を提唱しています。その考えが広まっていくことで、快適に働ける世の中のためにも、より良い影響を与えていくことができます。SDGsの目標においては、下記が該当します。
目標1.「貧困をなくそう」
目標12.「つくる責任 使う責任」

1. 人々が暮らす土地を守る

野菜や穀物よりも比較的高値で取引される食肉を生産するため、より広い土地を求めて開拓が行なわれています。その際、土地を追われてしまうお金のない人たちも多くいます。
また、そうした肥沃な土地をめぐって、紛争などの争いの引き金にもなっています。

ヴィーガン・ベジタリアンのライフスタイルが広まり、畜産業のためにさらなる開拓が行なわれることが減れば、こうした自分の土地を追われる人も減らせる可能性があります。

2. 生産の透明性を大事にすると働く人も快適に

近年、SDGsや環境問題、持続可能な開発に向けた意識が高まる中で、商品をつくるメーカーとしても、サスティナブルな(持続可能な)ブランドであることやエシカルな(倫理的配慮がされた)ブランドであることの価値が高まっています。
その中で、原材料だけではなく、生産工程の透明性や、ブランドとして多様性を尊重していること、さまざまな観点で倫理的な配慮がなされていることが重要視されはじめています。

そのため、原材料においても搾取はせず公正な取引を行なうこと、労働環境や働く人に配慮されていることなどが、ブランドの価値に反映されるようになってきています。

直接的ではないかもしれませんが、ヴィーガン・ベジタリアンの価値観やライフスタイルが広まることは、働く人へもプラスの影響を与えていける可能性があります。

3. 多様性を許容する世の中へ

ヴィーガンやベジタリアンは、食を中心に動物性のものを使わないライフスタイルです。その中でも、さまざまな理由でヴィーガン・ベジタリアンを選択する人がおり、何を食べて何を食べないのか、非常に多様な基準があります。
完全菜食主義の方もいれば、卵は食べる方もいますし、五葷と呼ばれるスパイスを避ける方もいます。

そうした考えが広まることで、さまざまな食やライフスタイルを許容し、多様性を大切にしていく文化を育んでいくことができる可能性を秘めています。
数十年前に比べて、ライフスタイルをはじめ食生活やジェンダー、働き方など、どんどん多様な生き方が生まれています。時代が大きく変わる中で、そうした多様性を受け入れ、尊重しあうことはとても大切なのではないでしょうか。

ヴィーガン・ベジタリアンはさまざまな観点でSDGsに貢献できる

より良い地球を次世代に残していくために、課題はたくさんあります。
しかし、私たち1人ひとりができることもたくさんあります。

世界規模で話されていることは遠い課題に感じるかもしれませんが、ヴィーガン・ベジタリアンのライフスタイルを取り入れることは、身近ですぐにできること。元ビートルズのポール・マッカートニー氏が提唱した「ミートフリーマンデー」のように、1日だけ肉を食べないようにする、家で食べるお肉を大豆ミートなど代替肉にしてみるなど、すぐに実践できることもあります。
最近では、スーパーでも大豆ミートが簡単に手に入ったり、ヴィーガン・ベジタリアンの食事を扱うレストランも増えてきており、少しずつ身近になりはじめています。

環境問題は自分とは遠い場所の話だから、今すぐの課題ではないから等と知らないふりをするのではなく、今できる小さなことを実践していくことの積み重ねが、大きな結果につながるでしょう。

必ずしもヴィーガンだから、ベジタリアンだから良い悪い、ということではありませんが、これからの時代を生きる自分たちや子供・孫の世代のために、良い影響を及ぼし得る選択肢の1つなのではないでしょうか。

 

参考文献
*1 国連 経済社会局 (2022年)
*2 FAO(2017)“The future of food and agriculture:Trends and challenges”
*3 Food Outlook、国連食糧農業機関(FAO)(2022‐2023見込み/2022年)
*4 国連食糧農業機関(FAO)(2022年)
*5 農林水産省:我が国における食糧問題の現状と課題外部リンク

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